今にも飛びかかってきそうな恐竜、目が合えばサッと隠れそうなカニ、大きく口を開けて親鳥から餌をもらうひな鳥――。緻密(ちみつ)に再現されたうろこも羽毛も、すべて焼き物だ。これらは熊本県八代市坂本町に工房をもつ陶芸家、上村慶次郎さん(51)の作品。土に命を吹き込み、生き生きとした姿をつくりあげている。
陶芸を始めたのは約20年前。それまでは、イラストレーターやパン屋などを経験してきた。大工だったころに工事現場で粘土を見つけ、「これで何か作れるんじゃないか」と興味を持った。作家の書籍を見て連絡先を調べ、そのまま弟子入り。茶わんや皿、つぼなどの制作に取り組んできた。
立体的な生き物の作品は、陶芸を始めたころから試してきた。針金で骨格を作り、粘土で肉付けする方法を試したが、乾燥すると縮む粘土と針金の相性が悪く、割れてしまった。試行錯誤を繰り返し、粘土だけで細かく造形する技術を身につけた。
その粘土は、上村さん自身が掘ったものだ。車にスコップなどを積み、運転中に工事現場を見つけると、粘土をもらえないか交渉するという。模様をつける道具は、網や拾ったサンゴのかけら、植物など様々だ。
子どもの頃から観察すること…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル